ではシステムキッチンを、つまく使いこなしているかといえば、最近は個食化とかで、中学生の子供が自分の部屋でグラタンの冷凍食品を電子レンジに入れてチン。
食べたあとはパックの殻をポイ。
こっそり食べるから、こういうのを忍者食といいます。
忍者がシステムキッチンの中で鎮座する・・・実生活は案外こんなところかもしれません。
次に外車。
これもブームでベンツがよく売れています。
前年比で4割アップ。
それも最高価格帯1280万円から1760万円クラスのものがよく売れているといいます。
外車といえばいままでは右ハンドルにしないから駄目だといわれましたが、最近はむしろ左ハンドルに人気があります。
女性を乗せて東京から湘南海岸をドライブ。
顔を左に向けて夕陽が沈む海辺を彼女が見つめる・・・
その視線に運転する自分の姿が映る、そこで左ハンドルの外車が売れるそうです。
身につける装身具類もぐっとぜいたくになりました。
スリム・マジック金彩友禅は女性の下着、ガードルに24金をプリントしたもので、値段は8万円。
こうしたものがよく売れています。
人に見えないところに気を配る、これもリッチ感覚の表れなのでしょうか。
そういえば街には宝石をちりばめ、爪にマニキュア、奇抜なファッションに身を包んだペットたちが人間顔負けのポーズをとっています。
男性用ブリーフも、黒、ブルー、黄色、赤、水玉、小花模様、ぺイズリーとカラフルにとり揃えています。
ブリーフといっても、脇幅6センチ程度のビキニ・スタイルで値段は1枚1500円と普通の2倍。
こういうのは布の面積が少ないほど高く売れます。
これを高付加価値商品といいます。
近頃、ニューリッチという言葉をよく耳にします。
ニューリッチ、つまり新しい金持族です。
どういう人たちかといえば、比較的広い家(土地250平方メートル、住居150平方メートル)があって、年収1000万円以上は確実に入ってくる人。
数にしてざっと200万世帯ぐらいでしょうか。
ニューリッチといわれる人たちは、弁護士や医者、自営業などのほかに、サラリーマンの上級幹部クラスも当然この中に入ります。
概してオイルショック前に土地と家を購入し、すでに自分名義の住宅を持っています。
生活費を上回る収入があって、それなりに貯金もできます。
加えて財テクで一儲けして、資産効果の旨みも味わった・・・。
こういう人たちは懐に余裕があるから、商売する側としても大変狙いやすいのです。
まさに上客ですね。
ニューリッチを狙った商売の数々が、近頃、新聞や雑誌を盛んに賑わしているのもそのためでしょう。
例えばシステムキッチン。
高級なものは価格が300万円から500万円もしまする、これが大変好評で前年比50%も伸びているのです。
一見マントルピースのように見えて、台所のインテリアにもなります。
いままではせいぜい100万円止まりでした。
なぜこういうものを欲しがるかといえば、人に見せるためです。
いろんなものが収納できて便利な点もありますが、何よりの動機は「お客を招ける台所にしたい」ということ。
他人の目を意識した満足感なのです。
また、いま一つの例として、ある湖畔の温泉旅館は6部屋しかなくて一晩に6世帯しか泊められないのですが、ここでもパーソナルな対応が行き届いています。
浴衣はお客さん1人1人の寸法に合わせて用意され、各部屋とも広い温泉付き。
ディナーは旅館の主人がフランス仕込みの料理を披露、ブランデーや日本酒もそれぞれの希望に沿えるものをとり揃えてあります。
いつも予約客でつまっており、1度きたお客さんはまた来年、といった具合に固定客になるそうです。
また、大阪・枚方の農園料理屋は、自家栽培の品を中心にした手作り料理で近隣の評判を集めています。
ご主人は農家の後継ぎでしたが、5年ほど前から自家農園でとれた野菜類を市場に卸すのをやめて、それを手作り料理に加工してお客さんをもてなすことに切り替えました。
自家の敷地1万坪の農園でとれた季節の野菜、山菜、川魚などで会席料理、よせ鍋などを作り、スモモ、イチゴ、花菖蒲、イモ、ブドウ、カキなどの果物類も、自家栽培のものを最もおいしい旬の時節に提供するのです。
食後のアイスクリームも手製。
隣の牧場から牛乳を仕入れてきて夫婦2人でこねながら作ります。
客室も1部屋ずつ趣向をこらして、囲炉裏風にしたりお座敷風にしたり。
農園の1部屋にはお子さん用にロバの乗馬場を設け、夏は農園に縁台を出してビール園とします。
会社の親睦会やご婦人方の集まりなどにも利用され、1度来たお客さんはほとんど固定客化するそうです。
ここに紹介した靴屋さんと農園料理屋さん、これらはいずれも小規模の特徴を生かして、"手作りのサービスと心のぬくもり"を提供しています。
それはいずれも小規模だからこそ為し得ることで、真のサービスは極めて個人的なものです。
小さいことによって個性がより鮮明化され、お客への気配りが可能になります。
お客はほとんどファン層によって固定化します。
これからはこうした、小規模事業が確実に伸びる時代でしょう。
このことから、どういうことが考えられるでしょうか。
おそらく今後日本でも、小規模で濃密サービスを売り物にする商売が繁盛してくるに違いないでしょう。
お客さんはそうしたものをますます求める傾向にあるのです。
例えば田園都市線たまプラーザ駅前商店街にある、ある靴屋さんは30平方メートルほどの狭いお店ですが、パーソナルタッチの個客対応を売りものにしています。
このお店は10年前に開いた靴屋さんで、オーナーはお客さんの顔を1人ひとり思い浮かべながら、「これはあの人に似合うんではないか」という思い入れをもってクツを仕入れているそうです。
だから店に並んでいるクツは「これは絶対にいい」と彼女自身が確信のもてる商品ばかり。
女性客が多いですが、お客さんの方も自分のために選んでくれた品だと思うから値引きなど求める人はまずいないのです。
「このお店なら安心、またいい品が入ったら教えてね」といって固定客になるのです。
ダンスシューズを求めにきたお客さんには、「修理のときのために教えていただけますか」と言って名前と住所を聞くそうです。
こうして作った顧客リストは現在1000人ほどになるそうです。
そうした顧客に年に3回、ダイレクトメールで案内状を送ります。
オーナーはこう語っています。
「いま、クツは大型店との競争もあって大変です。小さな店をやっていくには、自分の個性を前面に出していくしかありません。
自分の信念をお客さまに訴えていくのが1番だと思います。
それに共感を抱いて下さるお客さんにエンジョイ・ショッピングをしていただく、それが私の生き甲斐で
す」
クツのほかにも色どりを添えたいと、数年前からスリランカ大使館に頼んでセイロン紅茶の直輸入販売も始めました。
クツの売り場のほんの一角を当てて紅茶と陶器類が並べられ、ギフト用にと紅茶を求めにくるお客さんも多いのです。
米国有数の市場調査機構、ヤンケロビッチは、鋭い社会的視点で定評のある2500人のオピニオン・リーダーをピックアップして毎年調査を続けています。
その調査では、ここ数年間に若干サービスの向上が見られたのはスーパーマーケットのみでした。
レストラン、ホテル、デパートは進歩なし、航空会社、銀行、ケーブルTVは明らかに後退、とレポートしたのです。
企業は安値競争から従業員にオーバーワークを強要し、給料は上がらないのに負担ばかり増えると働く方も意欲が上がりません。
それにコンピューター管理が発達して、レンタカー・オフィスの女子社員などは動作が全部コンピューターに連動して、勤務時間内に何人のお客と対話したか、その件数で報酬が決まることもあったのです。
いきおい1人ひとりへの親切な説明などは全部カットされて、サービスが工場のアセンブリーラインのように機械的に処理されていきました。
こうした状況への反動として、消費者は多少の出費は覚悟してでも心のこもったサービスが欲しい、もっと自分を親密に扱ってくれるところが欲しいと求めはじめたのです。
「LL・ビーン」は、ハンティングブーツからラクダのカーディガンまで6000品目(当時)を扱うカタログ会社ですが、24時間休みなく電話注文を受けつけています。
ピーク時には1日2万8000本の電話注文があるそうですが、それにもかかわらず商品は注文後必ず72時間以内に届けていたのです。
また、あらゆるサイズ、カラー、モデルの商品がストックされていて、納品率は99.8%。
リフォーム対策も怠りなく、ハンティングブーツだけで1年間に1万7000足も底の張り替え注文があるのです。
こうした優れた顧客サービスの結果、同社はカタログだけで年間3億800万ドル(当時約400億円)もの売り上げをみせていたのです。
こうした格調高いサービスが見直されてきたというのも、それだけ人々が"心のぬくもり"を求めてきたからでしょう。
自分と心を共にしてくれるサービスにこそ、お金を払う値打ちがあると感じ始めたからです。
それとここ数年、アメリカではサービスの低下が目にあまるものがあり、「もういい加減に何とかしてくれ」という気持ちがうっせきしていたことも見逃せません。
例えば『タイム』という雑誌が「誰か私を助けてくれ」という特集を組んで、消費者が非常にイライラしてサービスはどこへ行ってしまったのかという記事を載せていました。
銀行へ行けば行員が昼寝して、スタンプ液がタラタラとお客の顔に落ちてきたり、スピード・デリバリーの花屋さんがノコノコ自転車で配達をしたり、また女の人が新聞を買いに行ったらスタンドのおじさんが新聞に読みふけっているなど、とにかく日常のサービスが救いのない状態にあるということが漫画を交えて風刺的に描かれていました。
ある男性がトルコへ旅をして敷物を買いました。
値段はおよそ70万円。
クレジットカードで購入し、帰国して鑑定師に見せると半分の値打ちしかないことが判明。
そこでトラブルが解決するまで代金引落しを待って欲しいと申し出ると、アメリカン・エキスプレスは半額分だけ引落し、残金はトラブル解決後でOKと了解しました。
アメックスでは「サービス足跡レポート」という制度を採用して顧客サービスの徹底化をはかっています。
新規加盟客には15日以内、盗難・紛失などの場合は一ロで新規カードを発送。
6人の専任委員が毎年2万人の顧客をランダムに選んで満足度のチェックに当たっています。
シンガポール航空では、フライトアテンダントはフライトの10時間前からアルコールを飲んだりタマネギを食べるのを禁止されます。
採用条件も厳しく、合格率は応募者の2%以下。
採用後はメーキャップや料理の運び方、フォークの並べ方などの訓練を受け、機内掃除をやらせたり、旅行代理店でセールスの経験を踏ませたりした上で機内の業務につかせるのです。
86年、ギャラップという調査機関が米国の主要615社の幹部に、「今後3年間の最重要経営課題は何か」を尋ねたことがあります。
答えは「質の高いサービス」がダントツで全回答の48%を占め、生産性の向上や政府規制への対応などをはるかに引き離しました。
「顧客サービスは企業の死命を制する」、米国のビジネス幹部もこう評価を下しているようです。
サービス業に限らず、物を生産しているメーカーの経営者も"顧客サービス"を"品質向上"と同程度に重視していることが注目されます。
優れた顧客サービスはそれに比例して企業の業績も向上させます。
『フォーチュン』がアメリカで顧客サービスの優れた企業を各業界から1社ずつピックアップして、これらの企業のサービスはどこが優れているか、どういうところに違いがあるかを分析しています。
例えばクレジットカードでは「アメリカン・エキスプレス」、航空会社では国内が「アメリカン航空」、海外では「シンガポール航空」、銀行は「JPモルガン銀行」、ホテルは「エンバシース!ツ」、冷凍食品では「キャンベルスープ」、スーパーマーケットは「ウエグマン」、カタログ販売では「LL・ビーン」・・・。
こういった企業がベスト・サービス・カンパニーであると記されています。